魔族物語

【路上の夢 九話】

「大丈夫ですか?」

もう一度その女の声が呼び掛ける。
「うっ…」
意識の戻りかけた足の指に激痛が走った。
足に手を当てようとすると足に布のようなものが巻かれている。 「応急処置はさせてもらいましたが、あなたの足は凍傷ですぐ切断しないと一生歩けなくなりますよ!」
ホームレスへのボランティアをしているというその女は、医療に詳しいらしく、いかに俺の足がやばい状態かを伝えようとしていた。
「私は普段ここら辺を見回ってるんだけどあなたのような症状の方も大勢いるわ」
そうか… この女はここら辺を回ってるボランティアの人なのか。 もしかして…
「あんた、この辺りで時々立っている女性をしらないか…俺はその人をずっと探してたんだ」
「え?女性…」
暫く遠い目をして考えていた。
あんなにいた人の群れは今はポツポツと 時々時間に縛られない人々が通る軒並に変わっていた。

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