魔族物語

【路上の夢 七話】

「あ、起きてたんだ!」
君の優しい声がした。
「…う、うん」
白い部屋に、壁にある設備を見ると病室なことはわかった。

微かに会社にいた事を思い出した。
「あれ?俺…会社は…?」
君はじっ と見つめて「もういいの。」
と言った。
まるで終わってしまった事のように。

窓から夏の風がふく。 少し潮気のある南風。 空は青く、ムクムクとそびえたつ入道雲たちは夏の訪れを感じさせた。

その時異変に気付いた。
視点が合わない感じがする。さらに徐々にここに運ばれた経緯を思い出した。

うわぁ〜!!
っ発狂した俺を見る社員やバイト生の顔が浮かぶ…。

恐怖に脅えていた。
病室の鏡に映った俺の顔は 恐怖に脅えて引き釣っていた。
一瞬でここまで変わってしまうのだろうか…。

その場でまた吐いてしまった。 君は嫌な顔せずふいて、看護婦をよんでくれた。

でも俺は何もかも怖くなった。君の今の行為も何かの意図を疑ってしまう。

俺は10年勤めた会社に捨てられた。
そしてもはやまともな人間の道から外れてしまったのだ。

もう何も俺にはない。もう何もかも…。

この女も同情で今はここにいるが、すぐに見きりをつけて去るに違いない…。

もう夕方頃だろうか、暗くなった空模様にはポツポツ雨がふりはじめていた。

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