雨は夕闇と共にやがて音をたて勢いを増した。 君が飾った花瓶の花に目をやった。 黄色の小さなひまわり。 「俺にあいつは何を望んでいるんだろう…」 ふと頭をよぎった事でせっかく落ち着きを取り戻しつつあった頭は外の嵐のように興奮してきた。 「どうしてここに来るのか…俺は以前の俺じゃない…もう騙されるか…」 自分の境遇が痛みに変わるこの瞬間を、誰が分かってくれたのか。 上司に復讐する術ももはやない。皆自分の事が可愛い。だが俺は違ったぞ! 俺は会社を愛して尽してきた。だから営業にとばされても喜んで行ったんだ…。それがはなから会社は俺をはねる気でいたんだ…。 俺は…俺は…。 雨は空気を地面に引き釣り落としていく。 廊下から唸り声が聞こえる。そしてそれをなだめようとする声が、響いていた。 精神病院…。 俺はここを抜け出さねばならない。こんなとこにいればそのうち感覚もにぶって本当に病気になってしまうだろう…。金もなくなる。俺の金は誰にもやらねーんだ。 ひきドアのずれる音が聞こえた。そして薄水色の服を着た君が入ってきた。 「起きてたの?」 君は顔いっぱいの笑顔で聞いた。 「…」 俺にはコイツの考えてる事が分かる。皆同じだ。計算して自分の有益をとるのだ。 もうじきコイツが俺を見放す日も近いだろう…。 君は近付いて、ベットの脇のパイプいすに座った。 「調子はどう?気持ち悪くない?」 俺は苛立つ感情に任せてあらん限りの罵声を浴びせた。 記憶にあるのは内容じゃなくて、背を向けて泣きながら去っていった君の影。 あの夜の僕は何も感じなかった。 そして病院を抜け出した。 [先頭ページを開く] [指定ページを開く] <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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